体に良い?体に悪い? 科学的根拠がない健康情報の見分け方
ネットで見かける健康情報、どう見分ける?
インターネットやSNSを見ていると、「これを食べるだけで病気が治る」「特定の食品は体に毒」「驚きの成分で老化を防ぐ」といった、様々な健康情報に出会うことがあります。中には、一見すると科学的に聞こえるものや、多くの人が信じているように見える情報もあります。
こうした情報は、私たちの健康や生活に関わるため、つい関心を持ってしまいます。しかし、その全てが正しいとは限りません。むしろ、科学的な根拠が乏しい、あるいは全くない情報も少なくありません。このような情報に惑わされないためには、どのように真偽を見分ければ良いのでしょうか。この記事では、科学的根拠に基づかない健康情報がどのように生まれ、どのように広がるのか、そして私たち自身がどのように判断すれば良いのかを解説します。
なぜ「科学的でない健康情報」は生まれて広がるのか
科学的根拠に乏しい、あるいは全くない健康情報が生まれて広がる背景には、いくつかの要因が考えられます。
まず一つは、経済的な利益です。特定の健康食品やサプリメント、あるいは高額な健康法などを売りたい人々が、その効果を過剰に宣伝するために、都合の良い情報を作り出したり、根拠が不確かな情報を利用したりすることがあります。「これを飲めば簡単に痩せる」「この治療法で難病が治る」といった極端な主張は、消費者の悩みや願望につけ込み、商品やサービスへの関心を引くための手段となりがちです。
次に、善意による誤情報の拡散です。身近な人が「これで体調が良くなった」という体験談を話したり、それを聞いた人が「きっと他の人にも役立つ」と考えてSNSなどで共有したりすることで、誤った情報が広がることがあります。個人の体験談は、その人にとっては真実かもしれませんが、それが全ての人に当てはまる科学的な事実とは限りません。しかし、親しい人からの情報だと信頼しやすく、それがデマ拡散のきっかけとなることがあります。
また、人間の心理的な要因も関わっています。私たちは、不安や病気への恐れ、あるいは楽して健康になりたいという願望を持っています。科学的に証明された方法は地道な努力や時間が必要なことが多い一方、科学的でない情報は「簡単に」「すぐに」効果が出ると謳っていることが少なくありません。こうした情報に飛びついてしまうのは、人間の弱い心につけ込まれているとも言えるでしょう。
さらに、SNSなどのインターネット環境は、こうした情報が瞬く間に広がるスピードを持っています。クリック一つで簡単に情報がシェアされ、その信憑性を十分に確認しないまま多くの人に届いてしまいます。共感や感情に訴えかける情報は特に拡散されやすく、科学的な事実よりも先に人々の間に広まってしまうことがあります。
「科学的根拠」とは何か? デマとの決定的な違い
科学的根拠に基づかない健康情報と、科学的に証明された情報との間には、明確な違いがあります。この違いを理解することが、情報を見分ける上で非常に重要です。
「科学的根拠がある」というのは、客観的なデータに基づいて、繰り返し検証され、多くの専門家によって認められているということです。例えば、ある食品の健康効果を調べる場合、特定の成分がどのように体に作用するのかを化学的に分析したり、その食品を摂取した人々の体調変化を、摂取していない人々のグループと比較したりする厳密な臨床試験を行ったりします。こうした研究の結果は、査読付き論文という形で専門家の厳しい目でチェックされた上で発表されます。
一方、科学的根拠に乏しい情報は、こうした厳密なプロセスを経ていません。
- 根拠が曖昧: 「古くから伝わる」「〇〇博士が推奨」「体験者の声多数」といった、具体的な研究データや科学的なメカニズムが示されていない。
- 論理が飛躍している: 「〇〇が含まれているから、△△に効くはずだ」というように、科学的に証明されていない因果関係を断定している。
- 特定の事例に基づいている: 数人の体験談や個人の感想だけで、全ての人に効果があるかのように述べている。これは「エビデンス(証拠)」としては非常に弱いものです。
- 既存の科学的常識と矛盾する: 医学的に不可能とされる効果を謳っている。
科学的な知見は、多くの研究者の長年の努力と、厳密な検証によって積み上げられています。それに対して、科学的根拠のない情報は、個人の思い込みや、意図的な嘘に基づいている場合があり、その内容は検証されていません。これが、デマと真実の決定的な違いです。
科学的でない健康情報を見分けるためのチェックポイント
では、私たちは具体的にどうすれば、科学的根拠に乏しい健康情報を見分けられるのでしょうか。以下のチェックポイントを参考にしてみてください。
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情報源を確認する:
- その情報は誰が発信していますか? 医師や研究機関など、信頼できる専門家や公的機関でしょうか? それとも、商品の販売者や個人のブログでしょうか?
- 情報源が不明確だったり、匿名だったりする場合は注意が必要です。
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根拠の有無と具体性を見る:
- なぜその情報が正しいと言えるのでしょうか? 「科学的に証明された」「研究で明らかになった」と書かれていても、具体的な研究名や発表された論文、データなどが示されていますか?
- 単なる体験談や伝聞(「友達の友達がこれで治ったらしい」)は、科学的な根拠とは言えません。
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他の信頼できる情報源と比較する:
- その情報は、他の複数の信頼できる情報源(公的機関のウェブサイト、主要な報道機関、医学専門誌など)でも同じように述べられていますか?
- 特定の情報源だけが極端な主張をしている場合は、慎重になるべきです。
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極端な主張に注意する:
- 「奇跡の」「絶対治る」「これだけで全て解決」といった、効果を過剰に強調する表現が使われていませんか?
- 「医者は教えてくれない」「製薬会社が隠している」など、既存の専門家や組織を不当に貶めることで、自らの情報の正当性を主張するパターンもよくあります。
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感情に訴えかける表現に気づく:
- あなたの不安(病気への恐れなど)や願望(痩せたい、若くなりたいなど)に強く働きかけるような表現が使われていませんか?
- 感情に流されず、冷静に情報の根拠を評価することが大切です。
まとめ:賢く情報と向き合うために
インターネット上には、私たちの健康に関わる様々な情報があふれています。中には、科学的な根拠が乏しい、あるいは全くない情報も紛れ込んでいます。こうした情報に惑わされないためには、「これは本当だろうか?」と立ち止まり、情報源や根拠を確かめる習慣を身につけることが重要です。
すべての情報を疑う必要はありませんが、特にあなたの健康やお金に関わる情報については、慎重になることをお勧めします。この記事でご紹介したチェックポイントが、あなたが情報の真偽を見極めるための一助となれば幸いです。科学的な根拠に基づいた正しい知識を身につけ、安心して情報社会と向き合っていきましょう。