本物そっくり? 画像・動画デマの見分け方
インターネットやSNSを見ていると、衝撃的な出来事を捉えたとされる画像や動画を目にすることがあります。一見すると非常にリアルで、思わず信じてしまいそうになるものも少なくありません。しかし、そうした視覚情報の全てが真実に基づいているとは限りません。中には、意図的に加工されたり、文脈を無視して使われたりした「デマ」であることもあります。
この記事では、なぜ本物そっくりな画像や動画のデマが生まれるのか、そして私たちがどのようにしてその真偽を見分ければ良いのかについて、分かりやすく解説します。情報の波にのまれることなく、確かな情報を見極めるためのヒントをお伝えできればと思います。
なぜ画像や動画のデマは生まれ、広がるのでしょうか?
画像や動画のデマが生まれやすい背景には、いくつかの理由があります。
まず、現代ではスマートフォン一つで簡単に写真や動画を撮影・編集できるようになりました。特別な技術がなくても、アプリを使えば手軽に加工や合成を行うことができます。また、少し専門的な知識があれば、より巧妙な改変も可能です。
次に、視覚情報が持つ強い説得力があります。「百聞は一見に如かず」ということわざがあるように、人は文章よりも写真や動画といった目で見る情報に強いリアリティを感じやすく、信じやすい傾向があります。衝撃的な映像は感情に強く訴えかけ、冷静な判断を鈍らせることもあります。
そして、加工された画像や動画は、SNSなどを通じて瞬く間に多くの人々に共有されます。「すごい映像だ」「これは拡散しなければ」といった心理から、真偽を確認することなく安易にシェアされてしまうのです。このようにして、デマはあっという間に広範囲に拡散していきます。
本物とデマ、何が違うのでしょうか?
加工された画像や動画は、見た目には本物と区別がつかないほど精巧なものもあります。しかし、客観的な事実や科学的な視点から見れば、必ずどこかに真実との違いや不自然さが隠されています。
例えば、ある出来事が起きたとされる場所や時間と、画像や動画に写っている風景や状況が一致しない場合があります。また、被写体の影の向きがおかしかったり、複数の人物が合成されている場合に体のバランスや質感に違和感があったりすることもあります。最近ではAIを使った「ディープフェイク」と呼ばれる技術で、実在しない人物の顔や声を作り出したり、既存の映像の人物を別の人物に置き換えたりすることも可能になっていますが、注意深く見ると、表情の不自然さや瞬きの少なさ、声の機械的な感じなどに気づくことがあります。
最も重要なのは、その画像や動画が、それが示すとされる出来事や事実と、論理的・客観的に整合性が取れているかという点です。デマとしての画像や動画は、特定の主張や目的のために事実を歪めたり、都合の良い部分だけを抜き出したりして作られています。そのため、他の信頼できる情報源や、物理的な法則、あるいは一般的な常識と照らし合わせた時に、必ず矛盾が生じるのです。
どうすれば画像や動画のデマを見分けられるでしょうか?
私たちが画像や動画のデマに騙されないためには、いくつかの視点を持つことが大切です。
- 情報源を確認する: その画像や動画は、誰が最初に投稿したものでしょうか? 個人のアカウントからの投稿か、それとも信頼できるニュース機関や公的機関からの発表でしょうか? 過去にデマを流したことがあるアカウントではないか、公式マークがついているかなども確認する手がかりになります。元の情報源が曖昧だったり、すぐに消されてしまったりするような情報は注意が必要です。
- 画像や動画に不自然な点がないか注意深く見る: 影の向き、光の当たり方、物の質感、人物の輪郭や表情、背景の歪みなどに違和感がないか確認してみましょう。特に、あまりに都合が良すぎる、あるいは信じがたいような映像の場合は、立ち止まって注意深く観察することが重要です。スマートフォンの画面よりも、大きな画面でじっくり見る方が気づきやすいこともあります。
- 他の情報源と照らし合わせてみる: その画像や動画で報じられている出来事について、他の複数の信頼できるニュースサイトや報道機関が報じているかを確認します。もし、特定の情報源しか報じていない、あるいは同じ内容が他の場所では全く見当たらない場合は、デマである可能性を疑うべきです。また、画像検索や動画検索を使って、その画像や動画がいつ、どこで、どのような文脈で使われたことがあるかを調べることも有効です。過去の全く関係ない出来事の映像が、あたかも最近の出来事のように使われているケースも少なくありません。
- 感情に流されないようにする: 衝撃的で感情を揺さぶるような画像や動画ほど、一度立ち止まって冷静に考える時間を取りましょう。「大変だ!」「許せない!」といった感情が先走ると、情報の真偽を見極めることが難しくなります。一呼吸おいて、「これは本当に真実だろうか?」と自問することが大切です。
まとめ
画像や動画は非常に説得力のある情報ですが、同時に加工や偽造が比較的容易に行われる情報でもあります。安易に信じたり拡散したりする前に、立ち止まって情報源を確認し、内容に不自然な点がないか注意深く観察し、他の信頼できる情報と照らし合わせる、という習慣を持つことが、デマを見抜くための力となります。
情報技術が進歩し、視覚的なデマがより巧妙になっていく現代において、こうした情報の見極める視点はますます重要になっています。ぜひ、今回ご紹介した見分け方のヒントを参考に、インターネットやSNS上の情報と賢く向き合っていただければ幸いです。