「公式」発表なのに変? 偽装された情報を見抜くヒント
インターネットやSNSを見ていると、「これは〇〇省の公式発表です」「権威ある研究機関の報告です」「関係者からの内部告発です」といった言葉と共に、何らかの情報が共有されているのを目にすることがあります。
こうした情報は、一見すると非常に信頼できそうに見えます。なぜなら、「公式」「権威」「内部」といった言葉には、特別な重みや説得力を感じるからです。しかし残念ながら、中にはこうした言葉を巧妙に使い、実際には真実ではない情報を広めようとするケースも存在します。
この記事では、なぜデマが「公式」や「権威」を装うのか、そして、どのようにすればそうした偽装された情報を見抜くことができるのかについて、分かりやすく解説してまいります。
なぜデマは「公式」や「権威」を装うのか
デマを広める側が、なぜ「公式」や「権威」を装うのか。それは、受け取る側がその情報を信じやすくなるためです。
私たちは普段から、政府機関や有名企業、大学、専門家など、「信頼できる」と認識している情報源からの情報を比較的疑わずに受け入れる傾向があります。これは、私たちの社会生活において効率的に情報を取り入れ、判断するための自然な心の働きでもあります。
この「信頼の心理」を悪用するのが、偽装された情報です。本物そっくりのロゴを使ったり、公式文書のような形式にしたり、架空の専門家のコメントを付け加えたりすることで、情報の見た目上の信頼性を高めようとします。そうすることで、「あの〇〇が発表したなら間違いないだろう」「こんなにしっかりした資料になっているのだから本当だろう」と、受け取った人が深く考えずに信じ込んでしまうことを狙っているのです。
そして、一度信じられてしまえば、その情報は「公式情報」「真実」として、さらに多くの人にシェアされ、あっという間に広がっていきます。特に、人々の不安や怒りを煽るようなセンセーショナルな内容と結びつくことで、その拡散力はさらに高まります。
偽装された情報の見分け方:チェックしたいポイント
では、私たちはどのようにして、巧妙に偽装された「公式」情報を見抜けば良いのでしょうか。いくつかのチェックポイントをご紹介します。
まず最も重要なのは、「その情報が、本当に発表元とされる場所から出ているか」を確認することです。
例えば、「〇〇省が発表した」という情報を見たら、実際に〇〇省の公式サイトを見に行ってみましょう。プレスリリース一覧や、関連する部署のページに、同じ情報が掲載されているかを探します。公式サイトに載っていない情報は、公式発表ではない可能性が非常に高いと考えられます。公式サイト以外にも、公式のSNSアカウントや、信頼できる大手メディアの報道なども確認してみると良いでしょう。
次に、情報の「具体的な内容」と「常識や既存の事実」を照らし合わせてみることも大切です。
例えば、「〇〇を食べると、あらゆる病気が治るという研究結果を、世界的権威の△△大学が発表した」という情報があったとします。もしこれが本当なら、非常に大きなニュースになり、多くの科学者やメディアが取り上げるはずです。しかし、そのような大規模な発表がどこにも見当たらない、あるいは、発表内容があまりにも既存の科学的知見とかけ離れている場合、疑ってかかる必要があります。科学的な発見や研究成果は、通常、専門家による検証(査読)を経て学術誌に掲載されたり、学会で発表されたりするものです。そうした正式な手続きを踏まずに、いきなりSNSなどで「常識を覆す大発見」として拡散される情報は、慎重に扱うべきでしょう。
さらに、情報が掲載されている「サイトやアカウント」そのものにも注意を払ってください。
公式サイトそっくりに作られた偽サイトは、URLをよく見ると本物とは少し違っていたりします(例えば、「.go.jp」や「.co.jp」が怪しいドメインになっていたり、スペルが間違っていたり)。また、SNSアカウントであれば、フォロワー数が極端に少ない、過去の投稿が少ない、あるいは不自然な内容が多い、といった点も偽物である可能性を示唆します。
その他にも、以下のような点に注意すると、偽装された情報を見破るヒントになります。
- 文章や表現に不自然さはないか? 公式文書としては考えられないような、感情的な言葉遣いや、誤字脱字が多い、構成が崩れている、といった点に注意しましょう。
- 日付や時間はおかしくないか? 発表日や情報が作られたとされている日時が、不自然ではないか確認します。
- 情報源の「証拠」は示されているか? 「ある筋からの情報」「関係者によると」といった匿名性の高い情報源しか示されていない場合、その信憑性は低くなります。
- 感情を強く刺激する内容ではないか? 過度に不安や恐怖、怒り、あるいは興奮や期待を煽るような内容は、冷静な判断を妨げます。こうした情報に触れたときは、一度立ち止まって深呼吸し、感情に流されずに事実を確認しようという意識を持つことが大切です。
情報を鵜呑みにせず、一歩立ち止まる勇気を
インターネット上には、私たちが日頃から信頼している情報源に似せて作られた、巧妙な偽情報が数多く存在します。こうした情報は、私たちの「公式なものだから大丈夫だろう」という無意識の信頼を利用して広まります。
しかし、少し立ち止まり、今回ご紹介したようなチェックポイントを意識することで、その情報の真偽を自分で確かめることができます。公式サイトで確認する、他の信頼できる情報源を探す、内容を常識と照らし合わせる、といった一手間が、デマに騙されないための強力な盾になります。
すべての情報を疑う必要はありませんが、特に「これはすごい!」「みんなに知らせなきゃ!」と強く心を動かされるような情報に出会った時こそ、その情報源と内容を冷静に確認する習慣をつけましょう。賢く情報と向き合うことが、デマやフェイクニュースから自分自身を守ることに繋がります。