グラフや専門用語に注意! 一見科学的なデマを見抜くヒント
インターネットやSNSを見ていると、「科学的根拠がある」「最新の研究で明らかになった」といった言葉や、グラフや数字、専門用語が使われた情報を見かけることがあります。一見すると、信頼できる正しい情報のように思えるかもしれません。
しかし、残念ながら、こうした「科学的に見える」情報の中にも、真実ではないデマやフェイクニュースが紛れていることが少なくありません。なぜ、デマは科学的な装いをするのでしょうか?そして、私たちはどのようにして、その真偽を見分ければ良いのでしょうか。
この解説では、一見科学的に見えるデマがどのように生まれ、広がるのか、そしてそれを見抜くための具体的なヒントをご紹介します。
なぜデマは「科学的」に見せかけるのか
デマやフェイクニュースを広めようとする人々は、情報に信頼性や権威性を持たせたいと考えます。そこで手軽に利用されるのが、「科学」というイメージです。
私たちは普段から、「科学的に証明されていることは正しい」という考え方をしています。テレビの健康情報番組やニュースでも、研究結果や専門家の意見が紹介されることがよくあります。こうした経験から、「科学的」と聞くと、私たちは無意識のうちにその情報を信頼しやすくなる傾向があります。
デマの発信者は、この心理を利用します。グラフや数字、専門用語を並べることで、情報が客観的で根拠に基づいているように見せかけ、受け取る側が「これは難しい話だけど、科学的なんだからきっと正しいのだろう」と感じるように仕向けるのです。
どこが違う? 「科学的な見た目」と「科学的な真実」
では、一見科学的に見えるデマは、本物の科学的な真実とどこが違うのでしょうか。大きな違いは、その情報が客観的な事実に基づき、論理的な整合性を持ち、検証可能な形で示されているかどうかです。
デマでよく使われる手口には、以下のようなものがあります。
- 都合の良いグラフの操作: グラフの縦軸や横軸の目盛りの幅を不均等にする、データのごく一部だけを切り取って全体像を歪めるなど、視覚的に特定の印象を強く与えるように操作されたグラフが使われることがあります。
- 専門用語の誤用や濫用: 実際には関係のない専門用語を並べたり、本来の意味とは違う文脈で使ったりすることで、情報が高度で信頼できるように見せかけますが、内容は不明確だったり、論理が破綻していたりします。
- 根拠不明な統計や数字: 「〇〇の人が効果を実感した」「△△の確率で危険性が増す」といった具体的な数字を挙げても、その統計がどのように収集されたのか、調査対象は誰なのか、信頼できる調査機関によるものなのかといった根拠が示されない場合が多くあります。
- 相関関係と因果関係の混同: たまたま二つの事柄が同時に起きている(相関関係)だけなのに、「Aが起きるとBが起きる」という原因と結果(因果関係)があるかのように結論づけることで、誤った関連性を示唆します。
本物の科学的な情報は、研究方法やデータが具体的に示され、他の研究者によって検証可能な形で公開されるのが一般的です。また、一つの研究結果だけで断定せず、多くの研究やデータが積み重ねられることで、徐々に確実性が高まっていきます。デマは、こうした厳密なプロセスや透明性を欠いている点が決定的に異なります。
どう見抜く? 一見科学的なデマのチェックポイント
一見科学的に見える情報に接した際に、それがデマかどうかを見分けるために、以下の点をチェックしてみましょう。
- 情報源を確認する: その情報が、大学や研究機関、公的機関、信頼できる報道機関など、確かな情報源から発信されているかを確認しましょう。個人のブログやSNS投稿、出所の不明なウェブサイトの情報は、特に慎重な確認が必要です。
- グラフや数字の根拠を探る: グラフが示されている場合、データの出所はどこか、軸の表示はおかしくないかを確認しましょう。統計や数字が挙げられているなら、「〇〇によると」といった根拠が示されているか、その根拠は信頼できるかを調べましょう。不自然なグラフや、根拠が曖昧な数字は警戒が必要です。
- 専門用語を調べてみる: 使われている専門用語の意味が分からなければ、一度立ち止まって検索してみましょう。その用語が本当にその文脈で正しく使われているか、あるいは単に権威付けのために使われていないかを確認します。
- 他の信頼できる情報源と比較する: その情報が、他の信頼できる複数の情報源でも報じられているかを確認します。特定の情報源だけが報じている、あるいは他の情報源と内容が大きく異なる場合は注意が必要です。
- 極端な主張や感情的な言葉に注意: 「絶対安全」「完全に危険」「歴史的な発見」といった極端な表現や、恐怖や不安を煽るような感情的な言葉が多用されている場合、冷静な判断を妨げ、情報を鵜呑みにさせようとしている可能性があります。科学的な議論は、通常、より控えめで客観的な言葉遣いをします。
- 「~らしい」「~と言われている」といった曖昧な表現に注意: 具体的な根拠を示さずに、伝聞や曖昧な表現で論を進めている場合、情報源が不明確で信頼性に欠ける可能性があります。
まとめ:見た目に惑わされず、冷静に真実を見極める
グラフや専門用語で飾られた情報は、一見すると非常に信頼できるように見えます。しかし、その「科学的な見た目」は、必ずしも「科学的な真実」を保証するものではありません。むしろ、私たちを惑わせるために意図的に作られた偽装である可能性も十分にあります。
情報に接した際は、その見た目や難しい言葉に圧倒されることなく、一歩立ち止まって冷静に吟味することが大切です。「誰が言っている情報か?」「根拠は具体的に示されているか?」「他の情報源と比べて矛盾はないか?」といった基本的なチェックを習慣づけることで、情報の真偽を見抜く力が養われます。
「科学的」という言葉に無条件に飛びつくのではなく、その中身を問い直す視点を持つことこそが、情報社会で賢く、そして安心して過ごすための重要なステップと言えるでしょう。