デマと真実の境界線

デマは完全には消えない? 形を変えて広がる情報の見分け方

Tags: デマ, 情報リテラシー, 情報拡散, 古い情報, 見分け方

インターネットやSNSを見ていると、「あれ?この話、前にも聞いたような」「確か、これはデマだって聞いたけど、また流れてるな」と感じることがあるかもしれません。

一度否定されたはずの情報が、なぜか形を変えたり、まるで新しい情報であるかのように再び私たちの前に現れることがあります。これはデマやフェイクニュースが持つ、やっかいな「しぶとさ」の一つと言えるでしょう。

この記事では、なぜデマは完全には消えず、形を変えて再び広がるのか、その背景にある仕組みを解説します。そして、そのような「形を変えたデマ」や「古い情報が使われたデマ」を見抜くために、私たちがどのような点に注意すれば良いのか、具体的な見分け方についてお伝えします。情報との賢い向き合い方を考えるヒントになれば幸いです。

なぜデマは「形を変えて」再浮上するのか

デマや誤った情報が一度広まってしまうと、たとえそれが否定されても、簡単には消えません。その情報が形を変えて再び広がる背景には、いくつかの理由があります。

まず、情報のコピーと保存です。インターネット上の情報は、瞬く間にコピーされ、様々な場所に保存されます。たとえ元の情報源が削除されても、誰かが保存した画像や文章、動画などが残り続け、別の場所で再び共有される可能性があります。

次に、受け手の心理が関わります。人は一度信じた情報や、自分の考えと合致する情報を簡単に手放したがらない傾向があります(これは認知バイアスの一つです)。たとえその情報が否定されても、「何か裏があるのでは」「真実は隠されている」と考え、訂正情報を受け入れずに、元のデマに近い話を信じ続けたり、わずかな変化を加えて再拡散したりすることがあります。

また、古い情報が悪用されるケースもあります。過去に実際にあった出来事の画像や動画、統計データなどが、現在の出来事であるかのように、あるいは全く別の文脈で使われることがあります。例えば、数年前に起きた災害の映像が、全く別の場所で起きた最新の災害であるかのように使われたり、過去の統計データが現在の状況を示すかのように提示されたりするのです。情報は常に更新されますが、古い情報がインターネット上から完全に消えることはほとんどありません。

そして、意図的な情報操作も考えられます。悪意を持った人々が、過去に効果があったデマを分析し、少し内容を変えたり、新しい出来事と組み合わせたりして、再び拡散を試みることがあります。これは、情報の真偽を見分けるのが難しい状況を作り出し、混乱を生むことを目的としている場合があります。

このように、デマが完全には消えず、形を変えて広がる現象は、情報のデジタル化による永続性、人間の心理、そして悪意のある操作など、様々な要因が絡み合って起きています。

科学的・客観的事実との違い:情報は常に「鮮度」が重要

真実の情報、特に科学的な知見や公的な情報は、常に更新・修正される可能性があります。新しい発見やデータに基づいて、過去の発表が訂正されたり、より詳しい情報が追加されたりします。信頼できる情報源は、このように情報が更新されたり、誤りが判明した場合には訂正を行ったりすることを明記しています。

一方、「形を変えて広がるデマ」や「古い情報を使ったデマ」は、しばしば情報の「鮮度」や「文脈」を無視します。過去の限定的な情報を普遍的な真実のように語ったり、ある特定の状況下でのみ有効だった情報が、全く異なる状況に適用できるかのように主張したりします。

科学的または客観的な事実は、その時点での最も確からしい情報に基づいており、必要に応じて更新されます。信頼できる情報は、その情報が「いつ」「誰によって」「どのような根拠に基づいて」発表されたのかが明確であり、後から検証したり、より新しい情報と比較したりすることが可能です。

しかし、デマはしばしば、情報の発信時期や元の文脈が曖昧にされています。「以前から言われていることだが」「一部で囁かれている」といった形で、情報の「鮮度」や「出典」をぼかし、あたかも普遍的な真実であるかのように見せかけます。

「形を変えたデマ」や「古い情報デマ」を見抜くための視点

では、私たちはどのようにして、このような「しぶといデマ」や「古くなった情報が悪用されたデマ」を見分ければ良いのでしょうか。いくつかの具体的なチェックポイントをご紹介します。

まとめ:情報の「いつ」「どこで」「なぜ」を問いかける習慣を

デマや誤った情報は、完全に消えることなく、形を変えたり、古い情報が悪用されたりすることで、私たちの前に再び現れることがあります。これは情報社会の避けられない側面の一つかもしれません。

しかし、情報の「鮮度」や「元の文脈」、「情報源の信頼性」、そして「更新・訂正の履歴」といった点に注意を払い、常に情報の背後にある「いつ」「どこで」「なぜ」を問いかける習慣を持つことで、そのような「しぶといデマ」を見抜く力を高めることができます。

情報に触れる際は、提示された情報そのものだけでなく、「この情報は本当に最新のものか?」「これは本来、何を表す情報だったのか?」と一歩引いて考えることが大切です。情報社会と賢く向き合うために、情報の「形」や「見せかけ」に惑わされず、その本質を見抜く目を養っていきましょう。