その専門家、本物? 信頼できる情報を見分けるチェックポイント
私たちは日々、テレビやインターネット、SNSなどを通じて多くの情報に触れています。特に、特定の分野について「専門家」と呼ばれる人が語る情報は、つい信じてしまいがちではないでしょうか。「〇〇大学の教授が言っていた」「著名な医師によると」「長年の研究者が発見した」といった言葉は、情報の信頼性を保証するように聞こえます。
しかし残念ながら、中には専門家や権威ある人物であるかのように装い、誤った情報やデマを広めようとするケースも存在します。では、どうすれば私たちは、こうした情報に惑わされず、信頼できる情報を見分けることができるのでしょうか。この記事では、そのための視点と具体的なチェックポイントをご紹介します。
なぜ「専門家」がデマの温床になりやすいのか
デマや誤った情報が広まる背景には、様々な要因があります。その一つに、「権威への服従」と呼ばれる人間の心理があります。私たちは、自分よりも詳しい知識や経験を持っていると思われる人物、つまり「専門家」や「権威ある立場」にある人物の発言を、無意識のうちに信頼しやすい傾向があります。これは、物事を判断する際に、いちいち自分でゼロから調べる手間を省き、効率的に情報を取り入れるための人間の自然な性質とも言えます。
デマを意図的に作り出す人たちは、この心理を巧みに利用します。自分たちの主張に説得力を持たせるために、実際には存在しない肩書きを使ったり、経歴を偽ったり、あるいは本物の専門家の一部分の意見だけを都合よく切り取って利用したりします。これにより、本来は根拠のない情報でも、あたかも確かな知識に基づいているかのように見せかけ、多くの人に信じ込ませようとします。
本物の専門家とニセ専門家の違いを見抜く
では、どのようにすれば、信頼できる情報源としての「本物の専門家」と、そうでない情報源を見分けられるのでしょうか。重要なのは、その情報の内容だけでなく、「誰が言っているのか」、そして「その人物の信頼性を裏付ける根拠は何か」を多角的に確認することです。
本物の専門家は、通常、以下のような特徴を持っています。
- 所属組織が明確である: 大学、研究機関、医療機関、公的な団体など、実在し、社会的な信頼を得ている組織に所属しています。
- 公的な資格や学位を持っている: 医師免許、弁護士資格、博士号など、その分野の専門性を証明する公的な資格や学位を持っています。
- 実績や業績が確認できる: 学術論文の発表、書籍の出版、研究プロジェクトへの参加、臨床経験など、具体的な活動実績があります。
- 発言に根拠がある: 自身の研究データ、統計、確立された理論、他の研究者の検証結果など、客観的な証拠に基づいて発言します。
- 批判的な検証に開かれている: 他の専門家からの質問や異論に対しても、論理的に応答し、必要に応じて自身の見解を修正することもいとわない姿勢を持っています。
一方、デマを広めるために権威を装う人物や情報は、これらの点が曖昧であったり、確認できなかったりすることが多いです。
信頼できる情報を見分けるためのチェックポイント
具体的な情報の見分け方として、以下の点をチェックする習慣をつけることをお勧めします。
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発言者の肩書きや所属を確認する:
- 「〇〇専門家」と名乗っていても、具体的な所属機関や役職名があるか確認しましょう。
- もし所属が書かれている場合は、その機関が実在する信頼できる組織か、公式サイトなどで確認してみてください。
- 肩書きが「〜研究家」「〜コンサルタント」など、公的な資格や組織に基づかないものである場合は、より慎重な確認が必要です。
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経歴や実績を調べる:
- その分野でどのような実績がある人物なのか、簡単なインターネット検索などで調べてみましょう。
- 研究者であれば、どのような論文を書いているのか(有名な学術データベースで検索できることもあります)、医師であれば、どのような病院で経験を積んでいるのか、などです。
- 公式サイトや所属機関のページを確認することも有効です。
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発言内容の根拠を確認する:
- 「〜によると」「〜というデータがある」といった言及がある場合、その「〜」が具体的に何であるかを確認しましょう。
- 具体的なデータや論文が示されている場合は、それが実際に存在するのか、その内容が正しく引用されているのか、可能であれば元情報にあたってみることも重要です。
- 個人的な体験談や伝聞、あるいは単なる「常識」に基づいているだけではないか、注意深く判断しましょう。
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他の信頼できる情報源と比較する:
- その情報が、他の複数の信頼できる情報源(その分野の主要な学会、公的な研究機関、確立された専門家、大手報道機関など)で報じられている内容と一致するか確認しましょう。
- もし、ある一人の「専門家」だけが主張しており、他の専門家や機関の見解と大きく異なっている場合は、特に慎重になるべきです。
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感情的な訴えに注意する:
- 過度に不安を煽る、恐怖心を植え付ける、あるいは逆に「これだけで全て解決する」といった極端に楽観的な主張には注意が必要です。
- 「私たちだけが知っている真実」「政府や大企業が隠している」といった言葉は、陰謀論でよく用いられるフレーズであり、客観的な証拠に基づかない可能性が高いと考えられます。
まとめ:情報源の確認が、賢く情報と向き合う第一歩
インターネットやSNSの普及により、私たちはかつてないほど多くの情報にアクセスできるようになりました。その中には、私たちの生活を豊かにする素晴らしい情報がたくさんありますが、同時に、誤った情報やデマも混ざり合っています。
特に、「専門家」や「権威ある人物」を装った情報は、その見た目の説得力から見抜くのが難しい場合があります。しかし、今回ご紹介したようなチェックポイントを意識し、情報の受け手である私たちが少し立ち止まって「この情報は本当に信頼できるのだろうか?」「この人は本当にその分野の専門家なのだろうか?」と確認する習慣を持つことが、デマに惑わされないための非常に重要なスキルとなります。
情報源を確認するプロセスは、少し手間がかかるかもしれません。しかし、そうすることで、私たちは誤った情報に基づいて間違った判断を下すリスクを減らし、真に信頼できる情報に基づいて行動することができるようになります。賢く情報と向き合うために、ぜひ情報源を確認する習慣を身につけてください。